6/4〜5に台湾で台湾・中国のプロ棋士16名による中日精英賽(中日精英戦)(海峰棋院主催)が開催されました。
(日本棋院の呼称は台日プロ選手権。
去年の「台日精鋭プロ選手権」から名称が変わったのはタイトルホルダーが参加するようになったから? )
台湾の囲碁サイトLGSが細かいところをレポートしてました。
対局中の研究室の様子、棋士らの交流の様子など。
後半は手空きになる棋士が多くてプライベートの横顔が多く見られます。
面白かったので訳しました・・・思いのほか時間がかかった。けっこう長いです。
非公式棋戦ですが、日本側と台湾側のモチベーションというかテンションの違いもLGSのレポートからは感じられます。
(誰が来たとか過去棋戦の経緯とか細かすぎる部分は割愛。結局8割くらい訳してます。
棋士さん本人が読むと大きなお世話と思われそうな部分もありますが。まあ、LGSですから・・・。(←?!))
元記事は下から順に時系列になっていますが、読みやすいように並べ替え。
以下、対局だけを見たい方にはどうでもいい内容。
棋譜はLGSの元記事内にリンクがありますからそちらからどうぞ。
写真もいっぱいあります。LGSのカメラマンはアオリでいい表情を撮ってきます。
6月3日
18:00〜19:00 前夜祭と抽選会
6月4日 LGSの元記事
9:00〜 一回戦
(以下、左側が勝者)
山田規三生九段B+R王元均三段,
王立誠九段B+2.5林立祥四段,
陳詩淵九段W+R小縣真樹九段,
林漢傑七段W+R張凱馨四段,
林至涵九段W+R高尾紳路九段,
周俊勳九段W+R謝依旻五段,
蕭正浩七段W+R向井千瑛四段,
葉紘源初段W+R王銘琬九段。
14:00〜 二回戦
山田規三生九段W+R王立誠九段,
陳詩淵九段W+3.5林漢傑七段,
林至涵九段B+2.5周俊勳九段,
蕭正浩七段B+R葉紘源初段。
6月5日 LGSの元記事
9:00〜 準決勝
陳詩淵九段(黒)中押し勝ち 対山田規三生九段,
林至涵九段(白)4.5目勝ち 対蕭正浩七段。
14:00〜 決勝
陳詩淵九段(白2目半勝)対林至涵九段(292手完)
・ルール:ベスト16の本戦は単純トーナメント方式。持ち時間各1時間、秒読み30秒3回、コミは黒6目半。
・審判長は林海峰名誉天元。
・決勝戦当日、張栩棋聖が研究会を主催する。
以下、記事抄訳。
6月4日(土)一日目
■審判の秦世敏がルールと注意事項を述べ、邱仕杰が日本語に訳し、中日精英本戦が開幕!
研究室にも棋士が集まっている。林海峰はモニター画面に背を向けて若手らの研究に加わっている。
■10時40分、蕭正浩七段白時間切れ勝ち 対向井千瑛四段(74手完),
研究室が騒然となった。「投了するような状況じゃないだろ?」
対局室で事情が分かった。向井千瑛が時計を押しておらず時間切れ負けになったということだ。アジア大会でも鈴木歩が時間切れ負けとなり、当方(台湾)に銅メダルが転がり込んだということがあった。蕭正浩は研究室に向かいながら「自分のほうが危なかったんだ」。向井は苦笑して負けを受け入れた。
(※いきなり波乱の幕開けです。
この一局、継続していたらどうなったでしょう?)
http://lgs.tw/qweyo8l(リンク先棋譜再生)
黒:向井千瑛四段、白:蕭正浩七段
■10時56分,周俊勳九段白中押し勝ち 対謝依旻五段(138手完)。
周俊勲が早くに優勢となり勝ちの一本道を進んだ。謝依旻(黒)は中盤にコウを探ることもできたがよくはなかった。紅面棋王に勝機をつかまれスピード勝ちをとられた。周俊勲の貫禄勝ちだが台湾の光・女流三冠の活躍も見たかった。続きは研究室(での練習対局)になる。
■11時12分,林至涵九段白中押し勝ち 高尾紳路九段(222手完)!
意外、すごい、とは思われないかもしれない、棋戦前に勝算があったとはいえ。「逆転の高尾」と言われるが、林至涵はアジア大会の後また勝利を収めた。この一勝は日本に恐れを抱かせる嚆矢となるだろう。
高尾紳路は快活な人で、負け碁でさえ笑顔を絶やさず並べなおした。
■11時17分,葉紘源初段白中押し勝ち、対王銘琬九段(142手完)!
台湾のトップ棋士五名が日本の若手に負けた第1回の本棋戦を思い出す。
葉紘源は入段40日で台湾の天元戦本戦リーグに入り、その実力はみなが認めるところだ。王銘琬は棋戦に参加できることを喜んでいて、別に勝利を目標においていなかった。しかし、Facebookでは林書陽、黃祥任らがこの結果は信じられないと書いている。ではこの棋譜配信に誤りがあるのだろうか?
■11時18分,陳詩淵九段白中押し勝ち 対小縣真樹九段(186手完)。
台湾の五冠王は順当に勝ちを奪った。棋戦の前、みな小県真樹をよく知らなかったが、きっと中部総本部のすごい棋士なんだろうと思っていた。陳詩淵は第二回に準優勝、今回はいつもどおりの実力を出せば決勝に進むだろう。台湾本土の(日本に所属していない)棋士が優勝するか?
■11時22分,林漢傑七段白中押し勝ち 張凱馨四段(146手完)。
「負けちゃったんだ!」陳義翔が残念がった。この後林漢傑は午後に陳詩淵棋王と対局した。林と陳詩淵の対局は、2年前の友情対局での早碁を覗くと正式には十年前アマチュアのとき以来であった。
なんと、終了した5局は全て台湾の勝利である! トーナメント表によると台湾同士でベスト4もありうる。決勝対局の一人は台湾と決まった。
■11時25分,山田規三生九段黒中押し勝ち 対王元均三段(195手止)。
まだ学生の王元均は新調の服に身を包み、国際棋戦を重視する気概十分だった。しかし相手は日本トップの山田規三生、力及ばなかった。日本は一分の戦力を有している。
■11時45分,王立誠九段黒2目半勝ち、林立祥四段(272手完)
20分前に山田規三生がベスト8入りを決めた。林立祥は細かい碁となり全力をつくしたが、かつて棋聖三連覇の王立誠の壁は厚かった。
一昨年には張栩と十段挑戦権を争った棋士である。このような大先輩の前では頭をたれて教えを請うのみである。
■12時30分から劉耀文老師と美女陳佳、のLIVE解説でーす!
LGSが選ぶ好局
(1) 林至涵執白中押し勝 対高尾紳路
(2) 周俊勳執白中押し勝 対謝依旻
(3) 葉紘源執白中盤勝王銘琬
みなさーん、サイトにアクセスしたら「肉ちまき」を用意して、大盤解説を楽しんでねー!!
(※・・・と書いてあります^▽^ 中継は終わってますけど。
台湾の端午節は旧暦の5月5日。今年は新暦6月6日がその日で、前後が端午節。
「肉ちまき(蛋黃肉粽)」を食べます。(しいたけとか肉とか入ってて竹の皮で包んで蒸したもち米の「中華ちまき」です。
日本の端午の節句の「ちまき食べ食べ〜♪」のおやつのちまきとはちがう。
よかったらこの記事も「肉ちまき」を用意してご覧ください。))
■14時40分,張栩棋聖と父親の張遠錫氏が研究室に来る。
部屋に入ったところから師匠の林海峰ら皆と挨拶を交わした。一同が日本の第一人者の訪問に「おー!」と声をあげると、研究に没頭していた李沂修も顔を上げた。
楊孟允:「(李沂修に)気にせず続けろよ、どのくらい変化ができた?」
棋聖は大勢を前にすると遠慮がちになる。するとすかさず冗談が飛ぶ。「このアマの友達は〜」
15時ちょうど、張豊猷来る。
■15時49分,林至涵九段黒2目半勝ち 対周俊勳九段(232手完)!
去年二連覇で感激の涙を流した紅面棋王が落馬。
昨夜の前夜祭では自分は二日目も打つ、4局打つと自身を高めていたが林至涵に阻まれた。ベスト4の一人は台湾の星。準決勝へ進んだ。
■16時22分,山田規三生九段白中押し勝ち 対王立誠九段(164手完)。
午前に日本の3名が姿を消したが、現在NHK杯覇者の山田規三生は勢いよく二連勝。しかし王立誠も惜しかった。優勢の碁でポカを打ち、勝ちを後輩に譲った。対局後日本の棋士が検討に加わると、その場には勝利を喜ぶ空気が満ちた。
(※この「ポカを打つ」は「打杓子(簡体中国語では『打勺子』[da3 shao2zi (ダー シャオズ)] 大さじを打つ)」と表現されてます。南方の表現らしいです。)
■16時26分,蕭正浩七段黒中押し勝ち 対葉紘源初段(195手完)
葉紘源は今日初戦突破で最大のダークホースと目されたが、まだまだ先輩に学ぶところが多いようだ。
■16時45分,陳詩淵九段白3目半勝ち 対林漢傑七段(274手完),
これで日本で活動する台湾棋士4名が全員消えた。陳詩淵は最近絶好調で負ける様子がない。しかし明日の対戦は棋王並みと見られる山田である。林漢傑は台湾帰国前の対局でちょっとした事件があった。対局中に石の取り上げにミスがあり反則負けとなったのだ。こういうことが彼の運に響いているのだろうか? 無論なにがあっても若い棋王から勝ちを奪うには気持ちを切り替えるのみである。
■17時40分LIVE中継。
目の前に林書陽六段が来ている。林は真顔で「ちょっと勉強しておかないと。友人の蕭正浩に抜かされちゃうから!」 解説は美人の陳佳、が手伝ってくれますよ。
(※このサイトはいちいち「美人の」ってつけますね。「美男の」は見たことがありませんが。)
6月5日(日)二日目
(※コネタが増えてきたのでサクサクっといきます。肝心の対局レポートは勝った負けただけなので省略。)
■10時10分、高速道路の渋滞で遅れていた張栩、小林泉美夫妻が二人の娘を伴って到着。これで台湾囲碁界の勢ぞろいだ。(略)
「ブラシ頭のお兄さん」と葉紘源がつぶやき、誰かが「葉教授〜ッ」と。
張栩がみんなと大笑いしたので棋士が「張栩、葉教授って誰か知ってる?」と聞くと
張栩棋聖「知らない(笑い)」。
(※葉紘源は14歳の初段。初日のレポートにもありましたが、プロ入り40日で台湾の天元戦本戦入りを果たし、本棋戦では初日一回戦で王銘琬(おうめいえん)九段に勝った。なかなかの大物らしい。^▽^ )
■10時40分,陳詩淵九段黒中押し勝ち 対山田規三生九段(103手完)!
周俊勲が「山田投了って! すこし勝ってたはずだろう!」
今聞いたところによると、不確定地が多いが白の逆転もあったのでは?とのこと。
(※ そうなんですか? 勉強したい人はぜひ。
・・・と思ったら、囲碁を遊びつくすよーブログさんが展開に感想を書いていらっしゃいました。
日本ではあまり大きく取り上げられなさそうな棋戦を見てる人がほかにもいる・・・うれしい^ー^)
黒:陳詩淵九段、白:山田規三生九段
■12時3分、謝依旻が研究室に来る。今朝はよく寝られましたか?
周俊勳、張豊猷らが「今日はきれいだね」と彼女をからかうと
陳義翔「『今日は』じゃなくていつもだよねえ!」
依旻「ありがと〜」
周俊勲「よくそんな甘いセリフ言うなあ!」
■12時半、大半の棋士は昼食に外出。
■午後に周俊勲の息子周リも加わって、研究室はしばし子どもの楽園に(※ほかにも棋士や関係者が子どもを連れてきている)。
周リは今日一つの日本語を覚えた。「コスミチャン」(張栩棋聖の上のお嬢さんの名前)。
■向井千瑛が蘇聖芳に対局を申し出た。周りが通訳し、二人は20秒碁を開始。
向井千瑛は謝依旻に3度挑戦しており、依旻とはプライベートではよき友人だという。
向井はとても快活で明るい。
高尾紳路と張栩のようだ。張栩は、あまり研究会に参加できないときも高尾の研究会には参加する、しかしタイトルがかかると盤上のライバルだと話す。棋士というのはこういうものだ。高尾もまた対局を離れると朗らかで笑顔のたえない人である。
■張凱馨は謝依旻の傍について撮影。新米棋士が一眼レフの練習中。
■依旻が張凱馨のカメラを借りて撮影中。
撮っているのは小林泉美が娘に碁を指導する様子、林文伯董事長が張栩に指導碁を受ける様子、友人向井千瑛と蘇聖芳との対局など。
カメラ小僧・イミン。
■蘇聖芳は自前のデジカメで向井千瑛とツーショット撮影。その後20秒碁対局。二人は黃龍士佳源杯の三将戦で対局し蘇聖芳が勝った。蘇は向井にこの新初段を強く印象付けたいに違いない。
■楊孟允が周俊勲の息子を抱いて父親の対局を見せにやってきた。
息子の周リいわく、「棒キャンディー(棒棒糖)だ!」
謝依旻は口を押さえたが、顔は笑いで真っ赤だった。周俊勲と謝依旻の定石が石がまっすぐ並ぶので、子どもには二本の棒キャンディーのように見えたのだ。
(※このキャンディーは台湾・中国の屋台などで見るサンザシなどを串刺しにして飴をからめたキャンディーでしょう。
こういうの(リンク先:google画像検索)。「糖球([tangqiu]タンチウ)」とか「糖葫芦[tang2hu2lu]タンフール」、山査串[shan1zha1chuan4] シャンジャーチュエン]など各地域で呼び方いろいろ。甘酸っぱい。)
周「もう一局!」
謝「はい!」
周「もう一局! オレが勝ったら終わりにしよう。」
謝「はい!」 (画像キャプション:『側で観戦する愛息の「棒キャンディー」攻撃で周俊勲は(10秒碁で)三連敗』。)
→→ここまで。
LGSでは決勝対局の解説動画も録画配信されています。
日本の「大盤解説」とはちがうレイアウト、ノリがなんとなくわかるのでは。
(日本式の大盤解説スタイルは台湾にもありますが、個人的にこの動画のスタイルのほうが親しみやすく感じられます。)
自分でも和訳とかできればいいなあと思って、とうとう中国語の辞書を買っちゃいました^^;発音が難しそうですが、囲碁新聞を読めるくらいには成りたいものです。
あと勝手ながら、私のブログの「リンク集」にリンクを貼らせていただきました。今後ともよろしくお願いします。
こちらこそ楽しんでいただいていると伺いとてもうれしいです。
海外の囲碁情報はおもしろいですよね(いろんな意味で)。意欲さえあれば中国語はすぐに上達されると思います! わたしも前は字を見るのもイヤだったんですけど、なにか面白いこと書いてあるらしい、というところからがんばって読むようになりました。^^
リンクどうぞどうぞ。こちらこそよろしくお願いいたします。