2010年11月21日

アジア大会一日目「勝負のために意味ある手」

アジア大会囲碁では予選は「持ち時間45分、秒読みなし」の時間切れ負けもありました。

また、これに関連して
中国対韓国では審判による「判定負け」干渉がありました。
アマチュアの大会で以前あったがプロ同士の対局では珍しいとのことです。
劉星七段唐奕二段(中国)対朴廷桓八段李瑟娥初段(韓国)の一局。
黒番の中国残り一分、白番の韓国残り四分の局面で、韓国チームは不利な体勢から荒らし・まぎれ(撹局[jiaoju])で対局相手の中国の時間切れを迫ろうとしました。
審判長が対局停止を指示し、韓国の審判からも書面にある大会規則について韓国選手側に説明があって、最終的には韓国チームが投了による負けを受け入れました。


毎日新聞.jpに日本語の記事が出てました。 ここでは「無意味な着手の連続で韓国が反則負け」と書かれています。

TOMの記事では、勝つために無意味な着手をすることの是非について意見が幾つも出ています。
負けた側の韓国ではさらに喧々囂々のようす。
「韓国はルール違反ではない。(相手の時間切れを狙うという)勝つための手段を選んだ」
「勝つために時間切れを迫るのが碁なのか。こんなことが続けば滅茶苦茶になる。」
「韓国の男子選手は金メダルをとれば兵役免除となるので、若手の朴廷桓八段などが勝負に必死になるのも分かる」
「そもそも秒読みなし・持ち時間切れ負けという予選のルール設定がよくない」


外野の議論では「書面上の規則を適用」が欠落している気がしました。(大会での規則がどう書かれているのか分からないのですが。どこかで読めるんでしょうか。)
兵役免除は国家が個人のモチベーションを上げるために入れた仕組みなのでそれを云々するのはまた別の話だとわたしは思います。

審判長が中国だというのが複雑にしています。
スポーツらしく、公正さを求めてサッカーのように審判は対戦国ではない第三国から選ぶ、となれば選手も観客も私情が少なく判定を受け入れやすくなるでしょうが、囲碁は高度の判断をできる棋力を有する人がわずかな国に偏っています。各国のルール理解も少しずつ違うし。

国際的なスポーツというのは共通理解されるルールで整理されているものですが、囲碁は今回が第一回のスポーツ大会への参加で、トラブルが起きるのも仕方ないかな、と思います。
シンクロナイズドスイミング、フィギュアスケートなど採点ルールはいつでも議論されていますし、ウエアや靴など道具の進化、ビデオ機器などによる審判の是非なども各競技で考え方の分かれるところです。
今回の件だけで「だから囲碁はスポーツ大会に参加できない」となるのではなく、国際的大会を開いていくつもりなら、「勝敗主義」であれ「交流目的」であれ、議論が必要でしょう。

へんな言い方かもしれないけど、なんの引っ掛かりもなく全てが決まるなんてスポーツでも文化でもない、と思います。意思と感情のある人間の活動なんだからモメるのは当然です。



同対局の棋譜(TOM)

李瑟娥(イ・スラ)初段はこの件でメディアに注目されました。
最初はショックが大きく取材を受けることに躊躇したものの、その後笑顔で応じたそうです。
「なんであれ注目されるのはいいことです。この大会を囲碁ブームに繋げたいと韓国選手一同特訓を積んできました。好成績は必須です」と。
大物ですね。
朝鮮日報の写真が複雑な表情の笑顔で彼女の心情を伝えるようです。
ちなみに彼女はこの日11/20が19歳のお誕生日でした。苦い一日だったけど一皮剥ける一年が始まりそうです。

どの棋士も勝ったり負けたりのなかでわだかまりを抱えることもあるだろうけど、それをどう処理して次に繋げるか、です。
posted by もっも at 16:32| Comment(7) | TrackBack(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
小師妹、この棋譜は最終図なんでしょうか。
ここで審判が止めに入った?
プロなら一瞬で判るのでしょうが、わたしの棋力では投げ場を求めたと言えなくもない。
ここで止めるにはどのような規定があるのか。わたしには思いつかない。気になります。
Posted by たくせん(謫仙) at 2010年11月22日 12:59
たくせんさん、
説明不足でごめんなさい!
このTOMの棋譜は「意味不明の進行」になる直前までの記録です。(たぶんこれが公式記録)。
Posted by もっも at 2010年11月22日 23:30
>「意味不明の進行」になる直前まで

判りました。それで納得しました。
ありがとうございます。
Posted by 謫仙 at 2010年11月23日 07:12
うーん……

「最高のパフォーマンスを…」という趣旨には賛同しますし文句なしですが。
そもそも”無意味”って誰が判断するんでしょう?

ふだん我々ザルたちにとっては、トッププロたちの手って「???」の連続じゃないですか? 「何、これ、どういう意図?」っていうのもザラですよね。で、結果的には「え、そんな深いヨミが!」と唸らされたりして。

勝勢に持っていくまでに残り一分まで持ち時間を減らしちゃった中国にも責任アリ(時間配分も作戦のひとつ)だし、第一、明文化されたルールがないのなら審判の横ヤリは越権じゃないでしょうか。

サッカーで、はるかに格下のチームがロング・クリヤ一辺倒を繰り返す“つまんない”試合からでも大番狂わせを起こすことがあるように、ルール違反でない限り、中押しか終局まで打たせるのが真の「国際大会」だと思います。

だって見てるこちとら、ヘボだから分かんないも〜ん(^^;)
Posted by きゃぶ at 2010年11月23日 15:24
きゃぶさんこんにちは。

碁は「これ以上石を打っても地が増えたり減ったりしない状態になったら終局」ということになっているので、今回の「無意味な手の連続」は地に影響しない手が続いた(らしい)ので、たぶんこのルールの適用ということなんだろうと思うのですが、わたしもよく分かりません^^;

上で書いたように、審判長が第三国でないというのが遺恨を残すもととわたしは思います。

サッカーとかで時間稼ぎのボールの応酬とかありますよね。最後の数秒で奇跡のゴール!とか。でも碁の場合一手のみで逆転が難しい。(プロの対局は)たいてい持ち時間使い切った後も「秒読み」がつくけれど、今回はタイトなスケジュールのために秒読みがつかないルールだったので「切れ負け」という戦略を許すかたちになってしまっているんだと思います。

まあ、囲碁そのものがシュートの点数とかラップタイムを競うシンプルなものじゃないので、一回目から大会運営がスムーズに行くわけないとわたしは思うけど、それにしたって・・・ですよね。
Posted by もっも at 2010年11月23日 19:16
そうですよねー。

ただ一点、忘れてはならないのは、「プレーヤーは人間でありミスをする」ということじゃないでしょうか。
一目の得にもならない手を連発するのがプロとして往生際の悪い恥ずかしいプレーであるのは事実ですが、それを「ムダ!」と断言できるのは相手がマシンの場合だけ。
ダメを詰め終わるまでにどんなミスが起こって、それこそ半目勝ってるか負けてるかわからないからこそ「整地」という作業が存在する、と。

いつか書いたかもしれませんが、高校野球では「凡打しても全力で一塁へ走れ」と指導されます。精神論ではありません。プレーヤーが人間である以上、「内野ゴロ=アウト」とは限らないからです。現に九回2アウトで“最後”の打球をさばき損なって泣き崩れた球児たちの何と多いことか。

所要時間が他と比べて飛び抜けて長くかかるのは仕方ありませんね。せっかくアジア大会“スポーツ”に加えてもらえたのは嬉しいけど、今回限りになっちゃうかも……。
Posted by きゃぶ at 2010年11月23日 22:05
きゃぶさん、
私の説明不足で誤解を招いてごめんなさい。
上の記事で書いた判定負けは「一手のみの無意味な着手」ではなくて、「無意味な着手が十数手続いて、あきらかに相手の時間切れを意図していると受け止められるものだったから」なのです。

逆転勝ちするのには時間がかかるけど、負けるのは一瞬の判断ミスなのも囲碁の恐ろしいところですね。急所を見逃しての着手ミスで地を破られたり欠け目になって死んでしまったり・・・><

囲碁がスポーツ大会に参加し続けるのか今回限りになるのか分かりませんが、国際大会は交流の場でもあるのだから気持よく進めてほしいなあ、と思います。
Posted by もっも at 2010年11月23日 22:29
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